キツツキ の 郵便受け

 

今回は、

「焼きタケノコ屋
の 3人衆」

からの

お手紙です。

みなさんは、「きつねうどん」を食べたことが

おありでしょうか。

わたしは、お恥ずかしながらずっと、

あれにはキツネが入っていると思い込んでおりました。

ところが、きつねうどんは、お揚げが入っているのですね。

そうと知ってからは、

息子と一緒に、お箸を使えるように猛特訓して

先日雪の夜、とうとう、きりかぶ食堂へ行って参りました。

そこで食べたきつねうどんのおいしいことといったら!

なんとまぁ、なんとまぁ!

ちょっと、ベロを火傷しましたけれど、

息子と大喜びで食べました。

きつねうどんっていいですねぇ。

本当に、すばらしい発明でございますねぇ。


                 キツネの母 より

僕らは南の島の山に住む、ルアックです。

ジャコウネコとも呼ばれます。僕らが近くにいると、甘い匂いがするんだって。

でも自分ではよくわかりません。


兄さんと弟と、ラックラック屋をやっているんです。

僕が、砂糖ヤシの木から樹液をとって、兄さんが米粉でつくった生地を焼きます。日本のたこ焼きを作るときみたいな型で焼きます。

弟は、カマドの薪係です。

焼き上がったラックラックに、ヤシの赤砂糖のシロップをたっぷりかけて

出来上がり。

この赤砂糖が大事なんです。香ばしくって、どんな味かというと

メープル楓のシロップと、日本の黒砂糖を混ぜたような風味です。

バナナの葉っぱに包んで、お持ち帰りもできますよ。


時々ケンカもするけれど、やっぱりラックラックつくるの好きだもんな。

今日も3兄弟で、ラックラック屋をやってます。


                         ルアック3兄弟 より

今、「コゲラの毛玉取り屋」は、おおいそがしなんです。

風が温くなると、衣替えのきせつです。

わたしたちコゲラは、毛糸のセーターを洗って干してあるのを預かってきて

きれいさっぱり毛玉を取ってさしあげるんです。

決して穴なんかこしらえたりしませんよ。

コゲラのつつきは、素早く、きれいに、繊細に、

これは、うちの親父の口ぐせです。


今は、のぶおくんのセーターをやっています。

のぶおくんのおばあちゃんが編んでくれた

すばらしい模様編みのセーターですよ。


取った後のフワフワの毛玉は、ドングリのぼうしに盛りつけて

ショールームに飾ります。

すると、シジュウカラやメジロの家族がよろこんで

座布団用に持っていくんです。


さぁ、それではそろそろ仕事にもどります。


みなさん、どうぞお元気で。

この山には、まいとし最初の春風が吹いた日に、

「春のブラッシング屋」がきてくれるんだよ。

どこから来るのか、ボクも、みんなもしらないけれど、

その日だけは、どんな動物でもケンカせず、

スミレの土手に腰をおろしてブラッシングしてもらうんだ。

ブラッシング屋は、びっくりするくらい色んなブラシを持ってるよ。

かためのタワシみたいなやつ。羽のようにやわらかいフワフワのやつ。

ボクの長い耳用には、タンポポの綿毛でつくった特別なブラシで

そよ風のようにブラッシングしてくれるんだよ。

ブラッシングが終わった後は、

ポカポカ背中をあっためながら、みんなウトウト。

この日だけは、すっかり安心できる、そんな日なんだ。

それから、日が傾いて山の向こうに消えるまえに、

みんな違う方角へ、そぅっと帰っていくんだよ。

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こいぬのころから、オレは、ブゥウウとあの音がきこえると

うれしくて、うれしくてたまりません。

オレのしっぽも一緒になってよろこぶよ。

あの音は、いちばんしあわせな音です。

あの音がするとあの人が来る。

そして、家のまえの箱に何かいれてくれる。

そのときの「ポサッ」という音もだいすきだ。

それから、それから!

あの人がこっちに来てかならずオレのデコっぱちを

なでてくれるんです。

「よーし、よしっ」て言ってくれるんです。

そのあと、乗り物にキックしてガッチャンといわせて

ブウゥと行ってしまいます。

オレ、あの人待ってるのだいすきです。


                        犬のゴロー より

「山の向こうなんか100年かかっても行けやしないんだよ。」

ぼくんちのばあちゃんは言ったけど、

ぼくと弟はどんなにしても、あきらめきれなくて

毎日ツバメ夫婦のところへ行きました。

さいしょは、キキッと追っ払われたり、つつかれたりしたけど、

なんべんもお願いして、とうとう小雨の朝にむかえに来てくれました。

まえから、あじさいの葉っぱを用意しておくように言われていたので

そのとおりにして待っていました。

ツバメ夫婦は、それをイグサのひもでしっかりくくりつけて

ぼくたちが乗りやすいようにしてくれたのです。

ぺたっとしっかりくっついて、ぼくと弟はあっという間に空の上にいました。

フワフワの雨の粒が、銀の粉になってとっても気持ちよかった。

晴れた日だと、ぼくたちがカラカラにひからびないように

小雨の日にしてくれたんです。

そして、ついにぼくら兄弟は、山をこえてはじめて海というのを見ました。

ツバメさんの首のうしろの羽毛は、

とってもやわらかかったです。


                          カタツムリ兄弟 より

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ある日、ミモザが言ったの。

「今度のステージで最後にしよう。」って。

いつもの公園で、池の方から丘の上に駆け上がるとき、

つまずくようになって、何度目かのことだった。

ちょっと前より足腰弱ったからって、

まだ耳だってちゃんとしてるのよ。

ずっとずっとおぼえてきた

「テトテトテト、パト」の音、

ミモザが、テトテトテトとクラブを投げて「パト」の音が来たらボールが来る。

あたしは、それを鼻ではじき返す。

これをしなくなるって、何だかまだよくわからないわね。

この後、ミモザとステージに出なくなっても、

あたしはシルク(サーカス)の犬だわ。

このタマシイは、新しくかえられないのよ。


でも、あっという間に今日になっちゃった。

今、ミモザがいつものように、風船のゴムでつくった

とくべつな爪カバーをはめてくれている。

仕上げに、フリフリ襟巻きをつけてもらって準備よし。

あ、入り口で売ってるキャラメルポップコーン、

いつもよりいっぱい作ってるわね、砂糖の焦げる匂いがちがう。

ほら、鼻だってよくきくのよ。

それに、今日はお客さんたちが大勢いるね。

大人も子どもも、いつよりずっとたくさんの

ざわめきが聞こえる。


ーー『フィノ と ミモザ!』ーー アナウンスだわ。

ミモザが目で合図してる。

さあ、もう行かなくちゃ、

じゃあね。

                  

                   犬 のフィノより

3本目のピンが、いつもうまく投げられなかったんだ。

ぼくは玉乗りでバランスをとりながらピンを投げると、どうしても3本目で

早く投げてしまうクセがあった。

もう、玉乗りはなしで、ジョングラージュをしようかと悩んでいたけれど、

あの日、いつもの公園で小さな子が遊んでいたボールが、

ちょうどフィノのところに飛んで来たんだ。

フィノはそれをポン、と鼻ではじき返した。

ぼくは、反射的にそのボールを受けてそのあとに続けてピンを投げた。

ぼくの悪いくせは、このタイミングで悪い癖じゃなくなったんだ。

3本目をボールにすることをフィノが教えてくれた。

その日から、フィノとぼくは何度も練習して、

フィノは、とうとう玉乗りしながらボールを受けることを覚えてくれた。

ぼくたちが、丘の公園から「銀のボール公園」と呼んでいる所へ場所を移して

本格的に出し物をやるようになって、その次の夏ごろだったかな、

まるい顔でニコニコした男の人が近寄って来て「うちのシルク(サーカス)に来ないか?」

と言ったんだ。

そうやって、ぼくとフィノは「 Tサーカス」の団員になった。

あれから調度8年、あっという間だった。

フィノは、子どもたちにも人気があって、いつも爪カバーにする風船をもらっていた。

(ちょうどいい滑り止めになるし、色もカラフルなんだ。)

爪カバー風船の色を選んでいるうちに、フィノはもう自分のクッションに座って、

前右、前左、後ろ右、後ろ左、の順に足を出す。

この準備の時間は、すっかりぼくたちに染み付いている。


「フィノ」

冬の朝プラトー通りのアパートの前で、

神様が授けてくれた、ぼくの相棒。


わぁ、カーテンの向こうは、すごい賑やかさだ。

たくさんの人が呼んでるよ。

今は、夢中になってあの歓声に応えよう。


独り言みたいな手紙になったけど、

読んでくれてありがとう。

行ってくる。                                 

                                                       ミモザ より

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村のはじっこ、竹やぶの下に、

ぼくたちの住む世界があります。

ぼくらは崖の下のネコたちです。

ここで、ひっそり、暮らしているよ。



この崖の下ではね、

7月の最初から、七夕さんの夜まで、

お楽しみの「ぐるんぐるんマーケット」が開かれます。

それはね、でっかいお皿に数えきれないくらい

たくさんの、おやつが乗っかってるんです。

そのでっかいお皿は、ぐるん、ぐるん、と回るんだよ。

最近やって来たばかりの、カギしっぽのクロくんが、

「中華皿みたいだ」って教えてくれました。



ぐるん、ぐるん、に合わせて

一緒について歩くのも楽しいよ。

いつか、中華皿っていうのを見てみたいな。


これから、とっても暑くなりそうなんだってね。

からだに気をつけて

元気でね。


                       崖の下のネコたち より

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わたしは、花貼りウサギです。

山から採ってきた花を、

障子が破けちゃったおうちに

こっそり貼ってくるんです。

今日はね、お花じゃないんです。

モミジがとってもきれいだったから

かごいっぱいに持ってきました。

ペタッと貼って、

ペタッと貼って、

かわいくなったらうれしいな。

いつか、このおうちに

誰かまた住まないかな〜。


もうすぐ冬がやってくる。

わたしもそろそろ冬支度。

みなさん、よい秋をすごしてくださいね。

              

                       花貼りウサギより

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お元気ですか。


ボクは今日、スズメのチュン子先生の

へのへのもへじ教室 」へ行ってきました。

これで8回目です。


チュン子先生が、くちばしに筆をくわえて、お手本を書いてくれます。

アライグマのカッちゃんの毛が、春に生え変わるときに

ちょこっともらって、つくった筆です。

それをグイッグイッと動かして

チュン子先生は、りっぱな「へのへのもへじ」を書いてくれます。

ボクたちは、それを見ながら練習します。


うまく書けるようになったら、

みんなで凧をつくって

田んぼのあぜ道で飛ばします。


                    

                    ねずみの

                       チューすけ より

こんにちは

わたしは、山道のカーブミラーでございます。

もう、何年も竹やぶのところに立っています。


この頃、たぬきの子どもがやって来て、

わたしに向かって歌うんです。

あの子はね、わたしにうつった自分のことを

すてきな友達だと思ってるんです。


「たぬきのルルル♪」と言う歌をうたいながら、

あの子がわたしに手を振ると、わたしの中の

小さなたぬきも手を振ります。


そのときの、あの子の喜びようといったら、

それはもう、泣きたくなるほど

かわいいのですよ。


                 山道のカーブミラーより

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お元気でおすごしですか。

この度も、お便りさせていただきました。

山道のカーブミラーでございます。


この辺りは、西風が強く吹きますと、

砂ぼこりが、ひどいんです。

今日は、わたしのピカピカの顔も、

すっかり、ほこりまみれです。



そこへ、あの子がやって来たのです。

(あのかわいらしい、たぬきの子ですよ。)

いつものように、わたしに向かって

飛んだり跳ねたり歌いましたが、

今日のわたしは、こんな姿ですから、、

ボヤケてしまって、あの子の大切な

鏡の中のともだちを、

映してあげることが出来なかったのです。



するとあの子は、何度も

「おーい、きみ、どうしたんだい?」

「おーい、おなかが痛いのかい?」

思いつく限り呼びかけますが、

鏡の中のともだちは、やはりボヤケたままなのです。

あの子は、しょんぼり肩を落とした様でした。

わたしは、どうにも出来なくて、

せつない気持ちで立っていました。

ほこり風の吹く中で、

ただ、ただ、立ち尽くしていたのです。



            山道のカーブミラー より

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はじめまして。

ぼく、アライグマの あら太です。



ぼくは、この間から「月の棒」のところへ

いくのをたのしみにしている。

月の棒っていうのはね、

うちのばぁちゃんが言うには、

あるとき月がふってきて、

竹やぶのとこの棒にささったから

「月の棒」なんだって。



その「月の棒」のまえで、

このあいだから、小さいたぬきくんが

歌ったりおどったりしている。

すごくたのしそうにやっている。

ほんとは、話しかけたいけれど、

ぼく、アライグマだから、

もしかして、たぬきくんが

びっくりするかと思って

いつもこっそり見るだけだった。



そしたら今日は、西風が吹いて

「月の棒」が、ほこりまみれになっちゃった。

そこへ、小さいたぬきくんがやって来て

いつもみたいに、歌っておどっているけれど、

どうも、ようすが変なんだ。

「おーい」「おーい」って言いながら

だんだん、泣きべそになっている。


こりゃたいへん!

ぼくは、とっさにシュロの木まで走って

ヒゲヒゲのたばをとって来た。

大いそぎでとって来た。



「これでみがけばいいんだよ!

がっかりしなくていいんだよ!」

ぼくは、たぬきくんに

シュロのたばを、さし出しながら

さけんでた。



たぬきくんは、目をまんまるにして

びっくりしたけど、

ぼくが、「こうやってね」って、

月の棒をみがいてみせると、

いっしょうけんめいまねをして、

サラサラ、キュッキュッとみがきだした。



「きみ、みがくのがうまいんだねぇ。」

と、たぬきくんが言う。


「ぼく、アライグマだからね、こういうの得意なんだ。」と、ぼくが言う。



そうするうちに、月の棒は、

もとどおり、ピカピカのまんまるになった。

そして、その中には、

たぬきくんとぼくが、なかよく並んで

映ってたんだ。


             アライグマ の あら太より

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 お元気ですか。

山道のカーブミラーでございます。


あの日、埃だらけのわたしを見て、

泣きべそをかいたタヌキの子に

わたしはどうにも出来なくて、

自分がくやしくて、くやしくて、、

切なく立っておりました。


そこへ、あのアライグマさんが来られたのですよ!

手にはすてきなブラシを持って!

そして、わたしをキュッキュと拭いてくれたではありませんか。

タヌキの子も、夢中になってまねをして、

すっかりきれいにしてくれたんです。


それから、タヌキの子とアライグマの子は、

まんまるの目をきらきらさせて、

楽しそうに肩を組み、「 たぬきのルルル♪ 」を歌いました。

竹やぶの笹の葉まで、一緒になって

くるくる踊っていましたよ。

わたしが今まで映した中で一番うれしいものでした。

こんなことがあるなんて、

カーブミラーもいいもんですね。

これからも、ずっとここに立っています。



もしかして、

いつか、会えたらいいですね。



                   山道のカーブミラー より


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また、この季節がめぐってきましたよ。


イノシシの兄弟が、竹林でタケノコを見つけ始めたら、

わたしたちも、店開きの準備です。



イノシシ兄弟は、堀りたてのやわらかいタケノコを、

パリッ、パリッ、ときれいに皮をはがしてから

カゴ一杯に届けてくれるんです。

わたしたちは、それを1本1本クシにさし、

炭火でジュウと焼くのです。



ネコのリンランが、特製タレの担当です。

これがまた香ばしくってたまりません。



冬のあいだ、会えなかった山のみんながやってきて

アツアツのタケノコを、ふぅふぅ食べるのをみると、

うれしくって、うれしくって、

なんだか、たまらない気持ちになるんです。



            

                 焼きタケノコ屋の三人衆より

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